HOW TO USE THE TOOLS
診断項目
この診断項目は、外国人に日本人の「説明」をいくつか見て評価してもらい、外国人が日本人の説明を評価するときの観点を抽出したものです。この診断項目は、外国人側の視点を反映させていることが特徴です。
診断項目は次のような手順で設定しました。(栁田2015)
① 日本人が外国人に「説明」を行う会話を収録
② ①の会話に参加した外国人にインタビュー
③ ②のインタビュー結果をもとに、質問紙を作成
④ ①「説明」の映像を③の質問紙を用いて外国人(60名)が評価
⑤ ④の結果に対する因子分析から評価因子を抽出
⑥ ⑤の評価因子を診断項目としてワークショップで試行し、修正
また、外国人が高く評価する日本人側の話し方において5つの診断項目のうち、どれが大きく影響を与えるかについて分析を行った結果、外国人は以下の点を重視していることがわかりました。
●日本人が会話に積極的・誠実に参加しているかどうか(1.積極的な参加態度)
●会話相手の外国人に合わせた説明が行われているかどうか(3.相手に合わせた説明)
〈もっと詳しく知りたい方へ〉
栁田直美(2015)「母語話者の「説明」に対する非母語話者の評価観点」『ことばと文字』4,
pp.46-54, くろしお出版
栁田直美(2017)「非母語話者は母語話者の「説明」をどのように評価するか-評価に影響を与える観点の分析-」2017年度日本語教育学会春季大会予稿集
ワークショップの進め方
やさしい日本語に初めて触れる方たち対象の2~3時間のワークショップの概要です。
3~5人のグループで行います。
1.やさしい日本語は特別なもの?
やさしい日本語はふだん行っている話し方の調整と似たようなものであることを認識してもらうために、次のような活動をウォーミングアップとして行います。
グループの中で話す人、聞く人、観察者の3つの役割を決め、話す人に同じトピックで次の3つの場面で話してもらいます。話す内容は3場面ともに同じです。
場面①初対面の方に話してください。
場面②仲のいい友人に話してください。
場面③外国人に話してください。
2.日本国内の多文化化の現状とやさしい日本語が求められる背景を知ろう
日本国内の在住外国人数のデータ、やさしい日本語が生まれた経緯、現在の状況などを紹介し、やさしい日本語について理解を深めます。
3.やさしい日本語で書き、ポイントを知ろう
「停電」「公共の交通機関」「お車でのご来場はご遠慮ください」などをグループで書き換えてもらい、以下のようなやさしい言葉に変換するときのポイントを紹介します。
ポイント①漢字が続く言葉はひらがなの言葉にしてみる
ポイント②例を示す
ポイント③敬語を使わない
4.立場を逆転―外国人の立場に立ってやさしい話し方について考えよう
日本人と外国人との会話(市役所の窓口対応のビデオ)を見て、外国人の立場からやさしい話し方について考えます。このとき、「観察者診断シート」を使って診断します。そのあと、「診断チャート」を使って、診断結果を共有します。共有する作業を通して、やさしい話し方はどのようなものか、グループで考えてもらいます。
5.やさしい日本語で話してみよう
在住外国人の方に協力してもらい、実際に会話をしてもらいます。その時、観察者は「観察者診断シート」を使って、会話をした人は「自己診断シート」を使って、診断します。そのあと、診断結果を共有し、さらにやさしい日本語について考えます。
外国人協力者がいない場合は、外国人役を決めて話してもらいましょう。
6.やさしい日本語の活用を考えよう
まとめの活動として、やさしい日本語が活用できそうか、どのように活用できそうか、また、活用する際の注意点などをグループで話し合い、全体で共有します。
〈もっと詳しく知りたい方へ〉
栁田直美(2019)「第9章 やさしい日本語の使い手を養成する-自治体職員対象の「やさしい日本語研修」の実践から」庵功雄 ・岩田一成・佐藤琢三・栁田直美編『〈やさしい日本語〉と多文化共生』pp.145-160 ココ出版